私は新卒で情報サービス会社に入ったが、
20年近く勤務した後は転職し、
数年前から不動産管理会社に勤務している。
せっかくの経験なので、
この際、若者諸君にも情報共有したい。
不動産管理業は地味な仕事だが、
メリットもそれなりにある。
ズバリ、出世や高額報酬よりも
プライベートを重視する向きには
かなり良い仕事である。
1.不動産管理業って何?
文字通り不動産を管理する仕事だ。
一口に不動産業といっても
実は大きく以下のように分かれており、
仕事内容も全く異なる。
①不動産売買
これも文字通り、
宅地や建物を売買する仕事である。
不動産仲介ともいう。
北川景子主演の『家を売るオンナ』という
ドラマがあったが、まさにアレ。
自分で土地建物の売主を探しだし、
それを買主に紹介する。
売ることが仕事なので、成績だけが命。
よって入社ハードルは低く、学歴不問が多い。
報酬は青天井で年収数千万どころか
数億円もありえるが、
コンスタントに売上を維持するのは
至難の業で、離職率は非常に高い。
②不動産開発
いわゆる都市開発だ。
近年では虎ノ門の再開発が有名で、
虎ノ門ヒルズが典型的な例。
「地図に残る仕事」が出来るのが遣り甲斐。
ただ、大規模な開発を出来るのは
三井不動産、三菱地所、森ビル…
といった大手だけ。
そういった会社に入るには
有名大学で優秀な成績を得ることが必須。
そもそも採用人数が数十人と少ないことから、
残念だが地方国立やMARCHレベルでは
かなり困難だろう。
③不動産賃貸
若者諸君が引越しを考えたとき、
住みたい街に行って不動産屋に入るだろう。
あの人たちがまさに「賃貸業」だ。
収入源は入居者からの紹介料の他、
物件オーナーからの管理料が中心なので、
かなり薄利多売だ。
その他、日常の物件管理や入退去の際の
清掃等も担当することが多い。
要するに「町の不動産屋さん」だ。
個人経営や小規模経営がほとんどで
入社のハードルは高くない反面、
多額の報酬は得られない。
④不動産管理
大きくマンション管理と
オフィスビル管理に分類される。
マンション管理とはマンション管理組合の
運営の補助や管理費等の会計を担当する。
担当マンションに故障等が生じたときなど、
その補修工事を担当することが多い。
不動産管理の求人の8割はマンション管理だ。
ビル管理は担当するビルの清掃や設備面の
メンテナンスが業務内容だ。
ただビルオーナーからの依頼内容によって
作業の幅が増減し、検針なども担当する
ケースがある。
マンション管理もビル管理も
それほど入社ハードルは高くない。
マンション管理はいわゆるクレーム産業なので、
比較的回転が速くて退職者は多いが、
ビル管理はさほどでもない。
収入面では日本人男性の平均値くらいで、
勤続10年で500万円弱といった感じか。
2.不動産管理業のメリット
思いつく限り、以下のようなメリットがある。
①景気に左右されない
②売上ノルマがない
③勤務形態に無理がない
④収入は普通程度
⑤転勤・出張がほぼない
⑥マンションの良し悪しが判るようになる
⑦不動産投資に詳しくなれる
これを説明してゆこう。
①景気に左右されない
中国人が世界中にバラまいたコロナのせいで、
2020年以降、世界中が不景気になった。
しかしどれほど不景気になろうと、
不動産管理業には影響が少ない。
そりゃそうだ。
不景気になり収入も減ったからといって、
共有部分の清掃業務をなくし、
住民が交代で担当しようなんてこと、
まず考えられない。
この他、多額のメンテ費用がかかる
エレベータを停止しようなんてことも
まずないだろう。
従って景気が悪化した場合でも、
値下げ要求くらいは考えられるが、
いきなり解約なんてことにはならない。
逆に言うと、好景気の際であっても、
増収はあまり見込めない。
良かれ悪しかれ安定しているのだ。
②売上ノルマがない
営業系の仕事をしていると、
常に頭の中は当月の売り上げのこと
ばかりでいっぱいだろう。
「ノルマを達成しないと営業会議で激しい
突き上げをくらう…(‘;’)」
「そうは言っても今月売れる見込み先はない!
ああ、どうしよう…」
私も営業時代、どれほど努力しても
全く報われない月が年に1,2度あった。
こういうときは逃げも隠れもできない。
営業会議でひたすら言い訳をするばかり。
周囲からの冷たい視線…。
こういう経験をした若者は多いはず。
だが不動産管理業でこの種の悩みはない。
営業担当(通常、「フロント」と呼ぶ)に
毎月の売り上げノルマは課されないからだ。
何故?
不動産管理業での売上には、
毎月の管理費収入と臨時の工事受注がある。
管理費収入は誰が担当しようと同じ。
一方、工事受注は担当者が組合の信頼を
勝ち得ていないと受注できない。
よって担当を評価するには
この工事受注の数字ということになる。
が、しかし…である。
工事の必要が生じるということは
多くの場合、経年劣化が原因である。
故に築年が古い物件に工事が発生する
確率は高くなるが、
築浅の物件には当然少なくなる。
つまりどの物件を割り振られるかで
工事の受注額は変わってしまう。
よって工事受注が少ないからといって、
評価を下げることも出来ないのだ。
こういう事情でフロントに
売上ノルマは課されないのが普通である。
③勤務形態に無理がない
要するに残業が少ないのだ。
あっても深夜まで拘束されるなんてことは
滅多にないはず。
一方で土日勤務が多いのは確か。
しかし代休が取れるので
火曜や水曜といった平日に休みが増える。
(平日の休みは非常に便利である)
つまり、自分の時間が確保しやすい。
その時間を副業に充てるもの一案だ。
実際、私は副業のために
不動産管理業を選んだ。
④収入は普通程度
会社にもよるが、勤続10年で500万程度。
これが現実だと思う。
昇進したとしてもプラス100万円がせいぜい。
勤勉にして能力があったとしても
年収1千万円はまず不可能。
そういう業界構造になっている。
つまり野心家が就く職業ではない。
『半沢直樹』のような劇的なドラマ展開
はまずない。
仕事で知合う人も、悪いが凡人ばかり。
「類は友を呼ぶ」を地で行く業界である。
それ故に、
人生は一度きりなので波乱万丈に働きたい
と思う若者はには絶対にお勧めしない。
多くはないが必要最低限の収入を得ながら
自分に与えられた時間を満喫したい…
そういう若者には打ってつけだ。
⑤転勤・出張がほぼない
転勤は自分が願い出ない限り、
まず無いと考えても良いだろう。
何故ならば、不動産管理業は区分所有者や
ビルオーナーとの信頼関係が大切なので、
担当者を短期間にバタバタと変えることが
出来ないのである。
もしそれをやってしまうと、
区分所有者やオーナーは自分の物件が
軽く扱われているのではないかという
疑念を抱くことになる。
従って転居を伴うような転勤は
この業界では滅多にない。
出張に関してもあまりない。
しかし、例えば東京本社の管理会社に
仙台支店があった場合で、
不景気で仙台付近の顧客が減ってしまって、
やむを得ず仙台支店を解散し、
今後は東京本部から定期的に出張させるという
ケースは十分に考えられる。
ただ、頻度としては月1回程度ではないか。
あまり心配することではない。
むしろ、地方巡回は良い気分転換だ。
⑥マンションの良し悪しが判るようになる
これは案外大きな利点だ。
この仕事に就けば、大小様々な物件の実態に
触れることができる。
「実態」というのは建物以外の内部事情だ。
つまり高級マンションといわれる物件に
どんな人々が住んでいるのか、
(実はかなり怪しい奴が多い)
あるいは、低級マンションには絶対に住みたく
ならない事情だとか、
管理費滞納の実態だとかを
目の当たりにすることができる。
その他、どのマンション開発会社で
どのようなトラブルが起きているか、
どう解決されているか(されていないか)、
人生で何度も買い替えることのできない
不動産という買い物について、
深く考えることができる。
つまり各不動産物件の本質を見抜く
コツを体得できる。
⑦不動産投資に詳しくなれる
これは⑥と同じ話だが、
サラリーマンの副業としてマンション投資
を考えている場合、その筋の知識が
得られる。
何故ならば、マンション管理組合の
理事会などに出席すると、
かなり高い確率でマンション経営を
している理事と知り合いになれるからだ。
マンション投資については別記事を
書こうと思っているが、
実際に投資している人物からの情報は
非常に役に立つ。
3.不動産管理業のデメリット
デメリットは↑で書いているので、
簡単に触れる。
・給与は高くないし、好景気でも上がらない。
・ドラマティックな仕事ではない。
(ものすごく地味)
・クレーマーの処理が大変。
(しかしこれはどの業界も同じ)
・突発的な事故対応が求められる。
(例えば漏水事故とか。しかし以前に比べて
減っている。年間1,2件程度)
4.不動産管理で必要な資格
●マンション管理
マンション管理で必要な資格は
「管理業務主任者」という資格だ。
マンション管理組合との折衝に必要な
知識が問われれるので
これがないと話にならない。
入社時点で資格を保有している方が
入社・転職には圧倒的に有利。
中には毎年受験しても合格しない輩もいるが、
合格率20%そこそこの試験なので、
職務に真剣でないと思われる可能性は
非常に高いし、とても恥ずかしい。
全く無知の状態からでも、
真面目に半年勉強すれば合格するはず。
★不動産管理関連の資格
管理業務主任者以外にも宅地建物取引士や
マンション管理士がある。
この3つの資格は出題範囲がほぼ同じなので、
まとめて受験することをお勧めする。
難易度は
マンション管理士>>宅建>管理業務主任者
これらの資格を持っているだけで、
月に1万円程度の手当てがつくことが多い。
●ビル管理
ビル管理には『建築物環境衛生管理技術者』
という資格が求められる。
マンション管理の3資格ほど知名度はないので、
入社時点では求められないが、
ビル管理会社では必須である。
5.不動産管理会社の選び方
不動産管理会社には↓の2通りある。
・デベ系
・独立系
①デベ系
デベ系とは「デベロッパー系列」の略だ。
デベロッパーとは↑に書いた不動産開発会社だ。
三井不動産、三菱地所、東京建物、森ビル…。
この他にも大手商社などもある。
これらの大手企業の名を冠した管理会社だ。
例)
三井不動産レジデンシャル
三菱地所コミュニティ
東急コミュニティ
野村不動産パートナーズ
東京建物アメニティサポート等々
②独立系
大手デベロッパーの系列会社ではない
管理会社を指す。
デベ系に比べて圧倒的にこちらの方が多い。
例)
日本ハウズイング
合人社
長谷工コミュニティ等々
③どっちが良いの?
若者が就職や転職をする場合は、
必ずデベ系を狙って欲しい。
何故ならば、デベ系ならば、親会社が
分譲した物件が自動的に転がり込んでくる。
解約がない限り、物件数は増える。
一方、独立系は親会社がないので、
顧客を自分で開拓する必要がある。
そうは言っても他社から物件をそうそう
奪えるものではないから、
値下げ要求されたり解約されると、
途端に経営が苦しくなる。
当然、コストにシビアで給料は上がりにくい。
不当なサービス残業を強いられることも多い。
④中小・零細は避ける
不動産管理会社に限ったことではないが、
中小零細は社長のワンマンが多い。
なので社長との相性が悪いと長く居られない。
長く居られたとしても待遇が悪い。
退職金などまずない。
残業手当もないと思った方が良い。
有給を認めない会社すらある。
社員はイエスマンばかり。
独立系は歳をとってからでも入れる。
若者は絶対に避けるべきだ。
6 まとめ
・金や地位よりも自分の時間を大切にしたい
のならば、不動産管理業は魅力的
・会社は大手デベロッパー系を選ぶ。
・入社ハードルはさほど高くない。
・給料もさほど高くならない。
・しかし景気に左右されにくい
・入社前に管理業務主任者資格を取る
・中小の管理会社はいつでも入れる。
自分に向いていると思った若者は
ぜひチャレンジして欲しい。
若ければ未経験でもOKだ。
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